シリーズ5回目の今回は、在宅避難について取り上げます。
在宅被災生活者とは?
自宅が無事だった方が、自宅で避難生活を送ることを「在宅避難生活」といいます。
無論、そのためには耐震診断を行い、地震に強い家屋にしておく必要があります。
また、役所等からの様々な情報や食料などは、地域防災拠点に届けられるので、これらは「地域防災拠点の避難者」と「在宅被災生活者」で共有しなければなりません。
在宅避難で注意しておきたいことは?
避難所に比べプライバシーを保つことができ、感染症などからも身を守ることができます。
また、住み慣れた自宅であることから精神的には楽ですが、電気や水、ガスなどのインフラが止まった状態で日常生活を送らなくてはいけません。
電気やガスが使えない状態で明かりや冷暖房をどうやって確保するか、水が止まっていたらトイレやお風呂、調理はどうすればよいのか、などの問題にも直面します。
だからこそ、事前に在宅避難を想定した上での家族の話し合いや防災備蓄が重要となるのです。
排水は設備の確認が終わってから
地震の際は目に見えない場所の下水管が破損している可能性があります。
浴槽やトイレの水などは、排水設備の確認が終わるまで流してはいけません。
集合住宅の場合は階下に水漏れや汚水あふれを発生させてしまうこともあります。
水は近所の給水拠点からも確保を
災害で断水となった場合、「災害給水ステーション(給水拠点)」が設置されます。
どこに設置されるかは事前に各自治体の水道局などで公表されていることもあります。
水を運ぶポリタンクも必要ですが、容量が多いものは水を入れると重くなり女性や高齢者は持ち運べなくなってしまうので、持てる重さを考えて準備を。
PTSDに注意しよう
「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」とは、災害時の恐怖や悲しみ、避難生活のストレスなどで体や心に変調をきたすことをいいます。
例えば食欲減退や過食、息苦しくなる、不眠、倦怠感や目まい、災害時のフラッシュバックが起こる、など。変調を感じたらなるべく他人に怖かったことや不安を話すようにしましょう。
予行演習をしよう
在宅避難ではどんなことが困難になり、何が必要になるのかを知っておくためにも、年に1度は家族で「防災の日」を決め、電気・水・ガスを使わずに、家庭内の備蓄だけで生活してみましょう。
備蓄食料の食べ方や非常用トイレの使い方も確認できます。
自力で3日間過ごすための備蓄品
災害発生から3日を過ぎると生存率が著しく下がってしまうため、災害発生から3日間は人命救助が最優先になります。
道路の復旧や避難所への物資輸送はその後になるので、まずこの3日間を自力で乗り越えられるよう準備しましょう。
電気、水道、ガスといったライフラインは、大災害発生直後は停止し、利用が困難になります。
内閣府による首都直下地震等による東京の被害想定によれば、各ライフラインの復旧目標日数は、電気で6日、上水道で30日、ガスで55日となっています。
また、過去の災害からの復旧を見ても、電気が一番早く数日で、次いで水道、最後にガスが復旧するという順番になっています。
各ライフラインに合わせた備蓄品は以下のようになります。
電気
電気はライフラインの中で、比較的早く復旧することから、ガスコンロの代替品となるクッキングヒIHーターや対応調理器具、電気ポットがあると便利IH
です。
水
水に関しては、水道が復旧しない間も給水車から水をもらうために、給水タンクや給水袋が必須となります。
ガス
ガスの復旧は遅くなることから、カセットコンロ利用のためのガスボンベを多く備蓄しておく必要があります。
ガスによって入浴をしているご家庭では、長期間入浴が不可能になることも考えられます。
タオルや衣服等を十分に用意することを心がけましょう。
また、冬季の場合は寒さ対策が必要になることから、ガスストーブ以外の暖房器具もあると安心です。
ローリングストックについて
災害が起こると食料の確保が最優先されます。
備蓄の必要性を感じている方も、実際に食料を備蓄しておくことはなかなか難しいものです。
災害時に役立つと言われている保存食も、何がどれくらいあるのかということを定期的に確認したり、食べ方を知っておかなければ、いざという時に賞味期限が切れていたり、温めなければ食べられず、食事にありつけなかったりするかもしれません。
備蓄の新しい方法
保存食を備蓄しておくことも、もちろん大切なことではありますが、日常の中に食料備蓄を取り込むという考え方もあります。
普段から少し多めに食材、加工品を買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足していくことで、常に一定量の食料を家に備蓄しておく方法をローリングストックと言います。
ローリングストックのポイントは、日常生活で消費しながら備蓄することです。
食料等を一定量に保ちながら、消費と購入を繰り返すことで、備蓄品の鮮度を保ち、いざという時にも日常生活に近い食生活を送ることができるはずです。
ローリングストックの2つのポイント
①古いものから使うこと備蓄する食料が古くなってしまわないよう、消費の際には、必ず一番古いものから使うようにしましょう。
新しいものを右側に配置し、左側の古いものから使っていく、というようにそれぞれ合った備蓄方法で上手に循環させることが大切です。
②使った分は必ず補充すること
ローリングストックでは、備蓄品としてストックしているものはいつ食べても構いません。
ただし、消費した量を必ず買い足すようにしましょう。
ちょっと補充を怠ったタイミングで災害が来る可能性もありますから、消費した分の補充は必ず直後に行いましょう。